第2章 ベートーヴェンの生涯




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第2節 シラー[歓喜に寄す]への出会い


第2章 ベートーヴェンの生涯

ベートーヴェンは、「第九」を作曲する際にシラーの詩に出会ったわけではない。もっと若い心を持っていた青年期に、非常に強いイメージで刻まれていたに違いない。また1804年レオノーレのスケッチにシラーの詩「歓喜に寄す」の一節とそっくりの言葉と、「歓喜のメロディー」とが結びついたのはただ偶然にそうなったということではない。

1787年シラーのこの詩がシラーの自費出版の雑誌「ラインニッシェ・ターリア(ラインの美の女神)」第2号に発表された。ベートーヴェンは1789年5月、ボン大学ドイツ文学科の聴講生となり、フランスのバスチーユ占領のニュースがボンに入ったとき有名なシュナイダー教授の熱烈な詩を聞く。そしてシラーのこの詩を読み感動する。

シラーのこの詩はドレスデンで作詩されるやいなや、書き写され全ドイツ語圏にひろがり、当時の進歩的な合理主義と国際平和の団体であったフライマウレル(フリーメーソン)の集まりで歌われていった。

それまでもシラーの書いた劇作はボンでは発表されたその年か、おそくも翌年には必ずといっていいくらい上演されていた。ベートーヴェンはボンのフライマウレルのメンバーとも親しかったので、ほとんど確実に印刷になる前に読んでいたに違いない。それ以上確かなことは、1792年ベートーヴェンはボンを離れる前に、「この詩の全篇に音楽をつけたい」と言っていたことがシラーの友人でありボン大学の教授となって赴任してきていたフィシェーニッヒがシラー夫人シャルロッテにあてた手紙に書かれている。シラーの発出の詩をベートーヴェンがボン時代に読んでいたということは『第九』の作曲の精神がどこにあったかを考える上できわめて重要なことである。

この詩に熱狂したのは、何もベートーヴェンだけではなかった。だがこの詩の真髄ともいうべき理念をシラーがとらえていた以上に鮮明にし、それを今日に至るまで全世界に行き渡るようにしたのはベートーヴェンだけであった。シラー自身はこの詩を書いた時点から後退し、変節したといっていいほど時勢に押し流されたにもかかわらず、ベートーヴェンは『第九』で「歓喜」をさらに大きく発展させた。

全ドイツが熱狂し、ベートーヴェンも詩の全篇に音楽をつけようと言ったのは、シラーがフランス大革命に先立って、その革命の原動力とも言うべき「歓喜」を民衆のものとするために歌ったからであり、「百万の人々よ、我が抱擁を受けよ!この接吻を、全世界に−!」と歌い「暴君の鎖を解き放ち、…絞首台より生還!」といい、そして、「乞食は王侯の兄弟となる」と革命を歌いあげたからであった。それはドイツ啓蒙思想が生んだ最も輝かしい所産であった。

だがシラーはドイツ啓蒙思想のもつ弱点もそのままもっていた。彼の思想にはフランス啓蒙思想がもっていた民衆自らの力で自由を切り開いていこうという面と、専制啓蒙君主制にたより、その枠内で不合理な面だけを教育的になし崩しに改めていこうという面とが共存していた。シラーはドイツの後進性、狭苦しさ、みじめさを自覚し、それから逃れようとはするものの、革命によってではなく、観念的な理想国家に向かい、理想の中に逃避する。

1789年フランス大革命が始まると、軌を一にするかのようにドイツ啓蒙主義は指導者を失う。ドイツは民族的な狭さに逆もどりする。シラーの詩が高唱した「この接吻を全世界に」ではなくなる。シラーもこの逆流に歩調を合わせて変節する。シラーは、この詩を書いた1775年のときは落胆してドレスデンにたどりついたのだが、友人フィシェーニッヒに暖かく迎え入れられて元気を取り戻したのであった。それが1800年にはフライマウレルの思想に触発されて作詩した『歓喜に寄す』は若気のいたりだったと、フィシェーニッヒは書くようになる。

シラーは1803年に没するが、1805年に発表された全集ではシラーの遺志どおり、『歓喜に寄す』は改変されたものになってしまう。そして、その改変されたままのものが第二次世界大戦後まで通用することになる。ベートーヴェンの心をとらえたのは、まだ汚れを知らない時代の、元のままのシラーの詩であった。『第九』で「歓喜のメロディー」と一つになるのは、この初期の革命的なエネルギーに満ちたシラーの詩であった。彼はそのことを1812年のスケッチ帳で明記している。

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